4.材料の種類
●応力ひずみ特性からの分類【線形材料】
応力ひずみ特性が線形、即ち応力σが歪みεに比例する材料特性を持つ。
通常の材料の応力はどんなにひずみが大きくなっても降伏後の応力増加率は鈍り 破断応力を越えることはないが、構造解析の線形材料はσ=Eε(実際の3次元応力は ポアソン比νを考慮した計算式となる)で計算され、現実にはありえない極めて高い応力値になってしまう。
その極めて高い応力値の領域は降伏や破断が起きる可能性を示していると判断すれば よいが、その領域は破壊もせずに外力に耐えているので計算モデルの変形量は 実際より小さくなっている点に注意する必要がある。
【非線形材料】
応力ひずみ特性が非線形、即ち応力σが歪みεに比例しない材料特性を持つ。
もともと線形領域のないゴムなどの挙動は非線形弾性材料特性で計算する。
線形領域を越えた後の降伏現象は弾塑性材料特性で計算するが、一定の負荷状態 でも時間と共に応力状態が変化するクリープ現象も考慮可能である。
また温度依存材料特性では温度による応力ひずみ特性の変化を考慮できる。
<補足説明>
破断状態を計算するためには特殊な要素を必要とするので、一般的な構造解析ソフトではこの破断状態までは計算できない。
ほとんどの設計目標応力は降伏値未満であり、降伏状態をいくら正確に把握できてもあまり意味がないので線形材料特性での解析を利用した設計アプローチでも充分である場合が多い。
●方向性からの分類
【等方性材料】
応力ひずみ特性がどの方向についても等しい材料で、通常の金属材料や配向がランダムな短繊維強化プラスチック等にも適用できる。
【異方性材料】
直交3軸に関して応力ひずみ特性が異なる材料で、厳密な評価をしたい圧延金属板や特定な方向に繊維強化したプラスチック等に適用する。
【積層材料】
薄い直交異方性材料を何層にも重ねた構造材料で、大型プラスチック製品に適用する。
<補足説明>
強化繊維などによる異方性材料はミクロ的には非均質な構造で、その強度は繊維や母材およびそれら界面の接着強度等に依存する。
この微少領域の非均質構造をソリッド要素(立体要素)で表現することは可能であるが、実際に解析したい領域をモデル化した場合には最近の計算機でも計算不可能なとてつもなく大きな計算モデルとなってしまう。従って通常の構造解析ソフトでは異方性の均質材料としてマクロ的に取り扱っているのが一般的でミクロ的な応力状態は把握できない。