太陽光パネル架台の風圧強度
風速36m/secの風圧荷重に対する強度を確認します。架台は鋼板(耐力235MPa)を曲げた部材をボルトで固定した構造で、タテサンのパネル固定位置に風圧荷重と等価な集中荷重を掛けます。
一様断面部材の表現が容易な梁要素(ビーム要素)モデルと、実際の形状に近い表現が可能な板要素(シェル要素)モデルの2通り計算して比較しました。
因みに一様断面部材からなる構造物に対してはフレーム解析と呼ばれる計算方法がありますが、梁要素モデルはこれと同じものになります。
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●梁要素モデルによる簡易評価の例
【風向きが正面の場合】
風荷重はタテサンを斜め下向きに押します。
最大応力はタテサンのヨコサンとの締結位置の96MPaで、鋼板の耐力235MPaより十分小さい。
タテサンは支持点付近と中央に応力ピークがあるが、ヨコサンの柱や筋交いとの支持点付近に取り付けられたものでは支持点付近の応力ピーク値の方が中央の応力ピーク値よりも大きくなるところがある。
ヨコサンの応力は、前側中央の柱との締結位置に応力ピークがある。
【風向きが背面の場合】
風荷重はタテサンを斜め上向きに押します。
最大応力はヨコサンの前側中央の柱との締結位置の168MPaで、鋼板の耐力235MPaよりは小さい。
タテサンの応力は、ヨコサンとの締結位置と中央に応力ピークがある。ヨコサンの柱や筋交いとの支持点の影響は風向きが正面の場合ほど顕著ではない。
【結論】 部材の断面強度としてヨコサンの応力が高めではあるが問題ない。ただしボルト締結部の強度は確認できないので不明。
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●板要素モデルによる詳細評価の例
【風向きが正面の場合】
風荷重はタテサンを斜め下向きに押します。
全体の中ではタテサンの応力が相対的に高くなっていますが、最大応力はヨコサンの前側中央の柱とのボルト締結穴周辺の396MPaです。鋼板の耐力が235MPaであるから強度不足と思われます。
【風向きが背面の場合】
風荷重はタテサンを斜め上向きに押します。
全体の中ではやはりタテサンの応力が相対的に高くなっています。最大応力はヨコサンのタテサンとのボルト締結穴周辺の477MPaで、鋼板の耐力235MPaを大幅に上回っており強度不足です。
【結論】 ヨコサンと柱およびタテサンとの締結部周辺は増厚するなどの補強が必要である。しかしそれ以外の領域の応力は問題ないレベルである。
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●梁要素簡易モデルと板要素詳細モデルの比較
梁要素の場合は断面自体は変形せずに曲げモーメントに抵抗することを前提としているので、部材の断面強度だけしか確認できない。
現実にはボルト締結部では断面の一部に力が集中的に働き、断面が変形して応力が発生しており、薄肉部材を使う場合はその現象が顕著に出るので板要素モデルによる評価が必要になる。
しかし梁要素モデルは部材の応力分布の特徴を理解しやすいので設計初期には有効な情報である。理想としては梁要素モデルで部材の断面寸法や配置を検討し、板要素モデルで最終確認をするのが良い。